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「まーまー、まーまー」
「まーまーってなんだよ!」
何も聞いてないのに涙目になる。これも酒のせいか。でも彼は話をやめない。
「そしたらさ、男がこの桜の前に立ってんの。そんで穴掘っててさ、」
「あーまじやめろって!」
その後の展開が予想できて、思わず大声を出す。けれど彼は話をやめない。
「ざく、ざく、ざく、って掘っていって、膝下くらいの深さまで掘ってさ、そんでそこに、埋めたんだ。」
「な、なにを?」
お決まりだと思いながら聞いてしまう、本能的にノリのいい自分を恨む。
そうすると彼は満足げに、けれどどこか冷たく言い放った。
「俺の死体」
「は?」
予想外の答えにまた変な声が出る。死体ならまだしも、俺の死体って、どういう
ピロロロロ
「うわっ、」
自分の携帯の音にビビって大声を出してしまう。焦りながらも携帯を見ると、それは友人からの着信だった。彼とも共通の友人だったから、もし暇ならこいつも道づれにしようと電話に出る。
「もしもし?」
「なぁっ、」
電話に出た友人はなんだか焦っていた。
「どしたの?」
「なぁ、お前あいつと会った?」
「あいつ?」
「ーーだよ!」
その名前は、彼の名前だ。
「え?それなら、」
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