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「先輩……私の事、好きなんじゃないですか?」
はあ?僕が木佐結花を好きだって?またとんでもない事を。
寝言は寝てから言ってくれ。
「その恐ろしく身勝手な根拠は一体どうすれば出てくるんだ?そんな事より早く手を動かして。でないと帰りが遅くなる。」
放課後の図書室に僕と木佐結花の声だけが響く。
勘弁してくれ。こっちは来年受験だ。高2とは言え既に受験戦争は始まっている。こんな委員会の仕事ごときに時間を掛けるわけにはいかないんだ。
「そうだと思ったのになぁ。」
「木佐さん、この本全部棚に戻すまで帰れないの分かってる?」
「はいはい、やりますよぉーだ。」
彼女は目一杯の不服顔で渋々手を動かした。
ったく、こんなやつの事、好きになる訳がない。そうだ、なるはずないんだ。
同じ図書委員の木佐結花は僕の一つ下だ。
上級生と下級生がペアになって順に放課後図書室に残ることになっている。その僕のペアが木佐結花。
彼女は入学当初から目立っていた。
整った美しい顔立ちは見るもの全ての目を引き入学して三ヶ月になるというのに相変わらず注目の的だ。
ただ、注目の意味合いが多少変わってきてはいるけれど。
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