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ああ、もういろんな事が一気に起こりすぎている。頭が痛い。なんで。どうして。
「……どうして」
「ん?」
「……どうして、そんな、条件……」
そう問いを投げかけた。夜市さんは私に優しく微笑んだ。
優しい優しい目をしていて。その優しさで胸がとても苦しい。
「お前に、もう一度外に出て欲しかったからだよ」
お前を自由にさせてやりたかった。外の綺麗な景色を見て欲しかった。……自由にどこまでも飛び立って欲しかった。ここに来る前の、幸せだった頃のお前のように。
夜市さんはそういうと私の額と自分の額を合わせて、ぽんぽんと背中を叩いて来た。ーーああ、あの時のようだ。私がここに来たばかりで泣き喚いていた時。夜市さんが、私を安心させるようにぽんぽんと背中を優しく叩いてあやしてくれた時。
「俺のただの自己満足だ。……だから、泣くな。紅葉」
「あ……」
その時やっと私は自分が涙を流している事に気がついた。
「お前には幸せになってもらいたいんだ。お前は俺の宝物だから」
「だ、だって……夜市さん、男の人きらいで……!」
「ああ、そうだな。男は嫌いだ。俺が花売りになった原因も男だし、男の俺を抱きたがるのも男ばかりだ」
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