もう赤い糸は結ばれない

3/12
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 十年前、日本は第三次世界大戦に巻き込まれ多くのものを失った。終戦後、満足に食べることもかなわず、住むところもない。そんな中、発展していったのは闇市や地下街だ。到底手に入らないようなものもここでなら手に入る、そういった事が多いゆえに皆が皆闇市にくる。……国の偉い人さえも。  私は両親を戦争で失った。私だけ生きながらえた。……全然嬉しくなんかなかった。次々と親戚の家をたらい回しにされた。……最後に私を引き取った家など、金に目がくらみ六歳の私を「花売り屋」へと売ったのだ。  花売り。純粋に花を売っているわけじゃない。……体を売る人のことだ。花売り屋は花売りたちがいるところ。  昔は「花魁」「遊女」などと言ったそうだ。……少し昔だと「援助交際」とか変わったものもあったそうだけど。  「花売り」は男性もいるのだ。  夜市さんは男性の花売りの一人。売られたばかりの私の面倒を見てくれたのも夜市さん。     
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!