もう赤い糸は結ばれない

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 その言葉に大人しく従い、夜市さんの側へ座る。夜市さんは近くに来た私の髪をすくっていじり始めた。 「お前は綺麗だなあ。本当に綺麗だ」  容姿もそうだが、お前は本当に心まで綺麗な娘だ。 夜市さんは大事な話、と言っておきながら私の髪をいじりながら褒めるような事を言うばかり。 「……始めは、あの男の身請け話に乗るつもりはなかったんだよ」  そろりそろりと夜市さんが話し出す。私は髪をいじられながらもその話に耳を傾けた。 「だが、」  夜市さんは髪をいじるのをやめ、私の頭を優しく、とても優しく撫で始めた。 「俺がもらわれていけば、お前も自由にしてやると言われたんだよ」  俺の身請けの代金だけじゃない、お前の稼ぐであろう金も出すと、あの男は言ったんだ。  夜市さんはそう言って今度は私の頬を撫で始めた。 「そんな話、のらないわけがないだろう? ……条件っていうのは、それだよ」 「ど、して……」  私のため? でもどうしてそんな…… 「あの男は、どうしても俺が欲しかったんだろうなあ。俺がお前を可愛がってるとわかっていて、そう言ってきたんだ」  ああ、お前は何も気にするなよ。  夜市さんはそう言ったが、そうもいかない。私のせいだ。私のせいで夜市さんが売られて行ってしまう。     
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