チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)⑤

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 こんな台詞を俺に言える彼が、仁井村みたいな最低野郎とは思えない。  だから小南ならなっちを幸せに――大人になったなっちにほの暗い影を落とす何かを、彼から取り去ってくれるかも? と期待し、とりあえず任せてやってもいいかな……と思ったのだ。 (それに失恋という結果にはなったけど、ようやく告白出来たしさ。俺はやっとこさベストを尽くし終えられた)    正直、まだまだ全然未練がある。  三回目の失恋をしても、なっちへの恋をふりきれてはいない。  それでも『告白』という行為は、高校時代からの恋心へ一区切りをつけられた気がし、すっきりしている。   (賭けに負けても、なっちの親友ポジは俺だし! ――それにもしかしたら、チャンスが巡ってくるかもじゃん?)    なっちのことがまだ愛しいけれど、それは彼を不幸にしてまで叶えたい想いではない。  だけどもしも再び彼がつらい状況におかれたならば、その時は今度こそ俺が一番側で彼を支えると決めている。   (けど、ひとまずは俺もここで『卒業』ですよ。卒業おめでとー! 自分!)  何となく思い立ち、ペットボトルに張りついている包装にハサミを入れてはぎ取り、まだ中身が七割ほど入っているそれを机の上へ戻す。  そして俺は机の左上に鎮座している電話の受話器を取ると、素早くボタンを押して美術準備室へ内線をかける。   「――もしもし、なっち? 卒業式お疲れ様飲み会、今夜二人でしない?」    むき出しになったメロンソーダは、ペットボトルの中で鮮やかに爽やかな色をたたえ、静かに気泡をはじけさせている。  それはまるで俺にとっての青春を凝縮し、溶かしこんだような物質に見えた。        * 終 *  →→→後書きとお知らせ
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