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(到底信じがたいが……入部させることで多少なりとも俺が四ツ橋を監視できたり、二人を守る意味で、ここは許可した方が得策かもしれない。はねのけたところで少しの利もないし。屈したと見せかければ俺に対して油断もするだろうし……)
「……分かった。入部を許可する」
(教職でいることにこだわりはないし、いざとなれば四ツ橋と一緒にネットで炎上してやってもいいか。――そうしたら小南のこと守れるかな?)
若干投げやりな気持ちも含めて許可を出せば、媚びるように四ツ橋が腕にしがみついてきた。
「やったー★ ありがとうございまーす★★ ナツメ先生なら理解してもらえると思ってました★ ボク、先生のことだーいすき★★」
香水をつけているのか、ふわりと四ツ橋からバニラのような甘い香りがした。
(香りで誘って獲物を捕獲する食虫植物かな? あぁでもこいつは動くから、やっぱりただの性悪な人間か)
その後四ツ橋は俺の目の前でスマートフォン内の裸エプロン画像データを消してみせた後、脅迫に使用した紙は「オカズにしていいですよ★」と俺の手元に残して、上機嫌で帰っていった。
これからは施錠の確認をしっかりしなければならないのと、美術部の今後が面倒臭いなと考えつつ、俺は去年から徐々に減らしている煙草を手に取る。
(なぁ小南、今日はヘビースモーカー並みに吸っても多目にみてくれよ?)
心の中の小南に話しかけながら、ライターで火をつける。
すぅっと肺いっぱいに有害な煙を満たし、吐き出してから「他の部員にも害がないといいな」とぼんやり思った。
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