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この高校は、冬はベースが濃紺で縁はえんじ色のジップアップ式の学ラン、夏は白の開襟シャツ、という制服を採用している。
現代っ子の体格にあわせて型紙は調整しているようだが、デザインは開校時からほぼ変わっていないらしい。
変えようとすると、歴史の古い学校故にOBや地元から反発があるとのことだ。
「ふーん。……ちょっと面倒臭いこと聞くけどさ、小南はどういう方向に進学したいとかあったりする?」
小南はTシャツの上に開襟シャツを羽織る形で着ているが、暑いので首元が広くあいたTシャツであるし、薄い布地は下の鍛えられた筋肉の形を隠す気はないしで目の毒である。
毒を少しでも和らげるため、俺は敢えて嫌だろう話題をふる。
「……オレは頭悪りぃから無理かもだけど、コハクと同じとこ行きたい」
「ウゼエ!」と一蹴されるかと思っていたのだが、意外にも小南は素直に答えた。
いい加減星宮離れしろと言いたいが、面倒な話をしてくれるようなので、今そこには触らず話を進める。
個人的に彼の進路は気にしているが、それ以外でも俺は彼の副担任でもあるのだ。
「同じとこ行きたいから、勉強しなきゃな、とは思ってる……」
俺を見ていた視線が床に落とされ、精悍な顔に不安が影を落とす。
「そっか。まずしようと思うことからすべてははじまるから、これからだな。なぁ小南、お前――美大とか受ける気ないのか?」
小南を憂う気持ちにさせる気はなかった俺は慌ててフォローを入れ、前々から考えていたことを言ってみる。
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