二年生、夏~四ツ橋凛・後編~

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「ボクも煙草嫌いなんで禁煙賛成でーす★」    これまでの経緯を理解した四ツ橋が可愛らしく賛同の挙手をする。  コイツは煙草嫌いという感情より、ただ面白がっている割合が高いと思う。 「こんなところでも喫煙者は冷遇されんのな。先生悲しいわー……」 「だいぶ前から世間じゃそうじゃないですか★ もう流行りじゃないんです。百害あって一利なしなダサイ過去のモノなんです★」    目元を手のひらで覆い泣くふりをしてみるが、調子にのる四ツ橋は更に喫煙者を責めることを言う。   「ダサイ過去……とは、えらい言い様だなぁ、お前」    そういう意味でないのは分かっているが、まるで過去の自分へ向けられて言われている気になる。  あの人が吸っていたから俺も煙草をはじめて、捨てられたのに喫煙習慣だけ残って。  ――……本当にダサイ。   「せめてアイコスにしたらどうですぅ? それじゃボクたち失礼しますねー★」  そう言って美術室を出て行った二人が話す声が段々と小さくなり、完全に聞こえなくなる。  俺は小南に引っ張られたワイシャツを直してから、彼が座っていた椅子に腰かける。  とても煙草を吸いたくなったが、我慢して目を閉じる。 (あの人に捨てられて『生徒と教師』の関係はトラウマになったけど、楽しかった記憶を思い出せば、苦々しさと一緒に当時の幸せを懐かしむ気持ちもあって……。一年以上たつのに完全な禁煙に踏み切れないでいるのはニコチン依存以外に、まだあの人に未練があるからだろうな……)  この日はこれ以降、誰も美術室に訪れることはなかった。
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