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確かその時、四ツ橋とは小南を挟んで俺の真逆にいたはずで、見られていないと思っていたのだが――ばっちり見られていたらしい。
「もしやも何も、そういう感情を俺は生徒に持たない。年下はタイプじゃない」
本当は年齢にはこだわらないのだが、今は可能な限り疑惑から遠ざかりたいので俺は嘘をつく。
「気になったので、それから先生のこと観察させて頂いてたんですけど、まぁ見すぎですよね★ あと他の生徒を見る時より目が優しい」
四ツ橋は俺の発言など聞こえないという風に、持論を展開する。
「お前の言う通りもしかしたら、俺は他の生徒より小南を見ていたかもしれない。だけどさっきも言ったが、それは小南が不良だから。目がどうとかいうのは、そういう前提で四ツ橋が俺を見ているからだろ」
絶対に認めるわけにはいかないので、俺も食い下がる。
「ずいぶん否定されるんですね?」
「当たり前だろ。火のないところに発煙筒を焚かれてたまるか」
「うーん。まぁ教師と生徒ですから、禁断な関係になっちゃいますもんね★」
「そう。君子危うきに近寄らず、だ。だからお前が妄想したような事実はない」
禁断だと分かっているなら言うな! と忌々しく思いながら、俺はそう言いきってコーヒーに口をつける。
「先生が認めなくても構いませんよ。ボクは先生の恋、勝手に応援しますから★★」
己の推理をまったく曲げる気配のない四ツ橋の発言に、コーヒーを噴きそうになるのをかろうじてこらえる。
「迷惑だからやめてもらえるかな?!」
四ツ橋のような面倒な奴の応援なんて、ろくでもないものに決まっているし、そうでなくても両思いになろうなんて考えは微塵もないのだから。
「ボクが勝手にすることなので、先生はお気になさらずなのですよぅ★ 小南センパイが星宮センパイ以外になびくのか興味があるので、妄想を真実に出来るように頑張りますねっ★」
「だからお前っ……!!」
完全に愉快犯の顔で微笑む四ツ橋の胸ぐらを掴みあげたい衝動を、必死でこらえる。
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