558人が本棚に入れています
本棚に追加
(ブラジャーつけてパット入れてくれてたら、見た目完璧理想の女の子だったのになぁ! ……なっちは絶対嫌がるだろうから、仮に衣装として用意されてても、つけてくれなかっただろうけど……)
脳が勝手に、俺の理想的女性ボディを持つなっちを想像してしまい、股間がじわりと熱を持つ。
(オイオイオイオイ! 待てよ俺! いくら顔がタイプでも、男の友達相手に勃てちゃ駄目だろ?! 俺はホモじゃねーんだから!!)
自分の身体の反応に驚き、慌ててふたつ折り携帯をぱちんと閉じ、女装なっちの画像を視界から消す。
しかし一度その気になってしまった熱は静まらず、俺は仕方なくエロ本を取り出し、抜いて寝た。
……目はエロ本を見つつも、脳裏にはなっちの顔がちらつき、翌日彼と顔をあわせた時、俺は一人でとても気まずくなった。
(ほぼなっちで抜いたようなもんなんだから、俺ってばさっさとあきらめて、認めりゃいいのによ)
大人になった俺はこのことを思い出すたび、微笑ましくも苦々しい気持ちになる。
(なっちを好きだと認めて、リア高校の時に告白してたら、両思いになれてたのかな……)
そんなifを、時々考えてしまう。
俺が「自分はなっちに恋をしている」、という事実を認めざるを得なくなるのは、白雪姫の舞台以降に起きた、別件のとある出来事である。
けれど「なっちを恋愛的に好き」と認めることは出来ても、「男を恋愛的に好き」ということはどうしても受け入れられず、納得出来なかった。
(実際三十路こえた今でも、俺が恋愛感情と性欲を持てる男は、なっちだけだし)
俺の人生においてなっち一人が例外なだけで、俺は現在進行形で己をゲイだとは思っていない。
飲み会時にノリや勢い等で、男同士でキスをするようなこともあったが、その時は内心、いつもかなり嫌だった。
(ダチとして好きな男は何人もいるけど、そいつらに対してはなっちへの好きみたいな感情は、全ッ然わかないんだよなー。何がどうして自分がなっちへ恋をしたかは、いまだにあんまりよく分からないんだよねー……)
高校生の俺はなっちへの恋を、「ブスに囲まれているせい」とか「一時の気の迷い」と押し隠し、告白をすることはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!