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チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)④
なっちとは進路の関係で、三年生時にクラスが別になったが、どういう因果か、綿矢とは三年間ずっと同じクラスだった。
(別クラスになっても、ちょっかいかけに行ったけどな。なっちがイジメられてないか、心配だったし。――なーんて、もっともらしい理屈つけて。他の奴に盗られたくなかった、というのが本音の癖して)
俺たちは友達という関係のまま高校を卒業し、それぞれ別の県外の大学へ進学をした。
そして進学して早々の、大学一年生の四月半ばごろ、なっちと急に連絡が取れなくなった。
(再会した時に本人へこの理由を訊いたら、『携帯を水没させた』という、あるあるな事態のせいだったらしいけど。……でも「必要性は低くても、高校時代の友人とだって少しくらい、連絡取る努力をしてくれても良かったんじゃ?」と、思っちゃうんだよね)
自分だってその努力をしなかったことを棚に上げ、説明を聞いた時、俺は冗談混じりに軽くとはいえ、彼をそのことで責めてしまった。
(俺がなっちの新しい連絡先を調べなかったのは、「これでゲイにならなくて済む!」と、思ったせいもあったんだよねー。この後も長々と引きずるのに。浅はかだったよなぁ……)
なっちへの恋を振り切るために調べなかったのに、俺は彼と再会するまで、つながらなくなった電話番号とメールアドレスを、携帯のメモリから削除することが出来なかった。
(連絡先消せない時点で、未練アリアリなのが一目瞭然なのに、マジ俺ってば往生際が悪い)
念願の女との初セックスも経験し、実家に帰省した大学一年生の冬休み、俺は死にたくなるような衝撃の噂を耳にした。
その噂とは、『なっちと体育教師の仁井村がつきあっている』というものだ。
愕然としながら思い返してみれば、確かにいつ頃からか、なっちの目は仁井村を追いかけていたな……と、俺はようやくこの時、彼の恋に気がついた。
(でもまさか教師と生徒で、しかも男同士で恋愛関係になるなんて、誰が考えるよ? もっと言うと仁井村は「何股もしている」とか、「女子生徒に手を出している」とか、そういう黒い噂が昔からある疑惑の教師だぜ?)
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