チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)④

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 仁井村との交際の噂を聞いた俺は、最初に呆然として次にガッカリし、三番目に軽い逆恨みのような感情を抱いたのを覚えている。   (男好きになるなら仁井村じゃなく、俺にしとけよ!!)  まったくもって「お前がそんなだから、お前じゃないんだよ」、とでも言われそうな、自分勝手な思考である。  けれど最終的に俺の気持ちは「心配」へと行き着き、この話を聞いた後で仁井村のことを少し調べてみたのだが、相変わらずダークな噂しか出てこなくて頭と心が痛んだ。 (ヤバイ噂まみれだったのに、仁井村ってばよく長年教師やれてたよなぁ。後年、援交で免職されたという事実から考えると、噂の半分くらいは本当そうな臭いがするし。俺はいまだにそれが不思議だよ)    なっちのことが心配だけれど、彼とは連絡がとれないし、彼が同窓会的集まりに顔を出す様子もない。  互いの大学の距離だって遠く離れており、待ち伏せすることさえ難しいため、俺は彼に忠告のひとつも出来なかった。  この件で手詰まり感を抱えたまま大学二年生となった俺は、仁井村なんぞに盗られての失恋を忘れたいのと、学校に慣れた気のゆるみで、馬鹿みたいに頭空っぽで大学生活を満喫していた。   (なっちのことは気になるけど、彼が仁井村が好きで、奴のモノになってしまったのなら、俺にはもうどうしようもないし。……てゆーか俺、ホモじゃねーから!)    心の底でくすぶって消えない恋へ向かって、こんな言い訳をしながら。   「比呂志君は、仁井村先生の教え子だったよね?」    大学三年生の春休み、実家をたまたま訪れていた叔父に、予期せぬ質問をされた。   「えぇ、はい。担任とかじゃなかったけど、体育は教えてもらいました。仁井村先生がどうかしたんですか?」    仁井村の名前を聞いて嫌な気持ちになったが、なっち関連について何だかんだいって地味にアンテナを張っている俺は、なるべくにこやかに対応する。
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