チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)④

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 不快であると伝えれば、彼女が素直に謝ったので、俺は面倒さを感じつつも、正直に現状を話す。 「ふーん……。やっぱり、というか……瀬尾すら今、棗と連絡とれてないんだ……」    吉永の口ぶりから、彼女も『高校時代の同級生は恐らく誰も、なっちと現在連絡がとれていない』と、いうことを知っているのが分かった。  なっちと連絡がとれなくなった当初、彼の身に何かあったのでは?! と心配した俺は、オギーをはじめとした高校時代の友人たちに確認をした。  その結果、『全員全滅』ということが判明したのは、もうずいぶん前のことだ。   (仁井村とつきあっているらしい、と聞いた時に、新しい連絡先教えてこない理由を察したけどさ)    近年ようやく、「性の多様性を尊重しよう」という意識が高まってきているが、それでもまだまだ全然、偏見や嘲笑の眼差しの方が多い。  ヒトは己が理解出来ない・納得出来ない事柄が少数派なら、大概そんな思考と態度になりがちで、多数派が正義とされやすい社会に生きるなら尚更、そちらに迎合しがちだろう。  ――と、微妙な立ち位置にいる自分からはそう見え、そう思う。  俺が大学四年生時のこの飲み会をしていたころなんて、今より圧倒的に意識は低いため、風当たりがキツかったのは言わずもがなだ。  だからもしなっちが自分についての噂を知っているなら、新しい連絡先を旧友たちへ伝えてこない理由など、容易に推測出来るというものである。  仁井村は倫理を強く問われる教師という職業なので、リスクヘッジとしてなっちに旧友たちとの絶縁を命じた――という可能性も、なくはないだろうが。   「瀬尾は棗のこと、まだ友達だと思ってる?」 「思ってる」 「棗のこと、好き?」  「もしかして俺がなっちへ恋してること、バレてるのか?!」と動揺し、俺は思わず吉永を凝視してしまう。   「やぁね! アンタ、深読みしすぎだし! ――棗のことを今も、親友レベルに大切に思ってるか? と、訊いてるだけよ」    しかし彼女が至極真面目な顔で補足してきたので、動揺を押さえつけて隠しながら、俺も真面目に答える。   「思ってる。叶うなら、また連絡取り合いたいとも、思ってる」
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