558人が本棚に入れています
本棚に追加
「だって話す相手を選ぶというか、本当はアタシの胸の内にだけしまっておくべき類いの話でしょ。内容的に」
「ならどうして俺には話したんだよ?」
「だってアンタ、棗のことすごく気にかけて、大事にしてたじゃない。恋してるのかな? とアタシに思わせるくらい。――そこんとこ、一番最初に確認したでしょ?」
「ハ?!」
自分でもひっくり返った声が出たのが分かった。
(ちょ、吉永! そういう意味じゃない、と最初に声かけてきた時は言ってたじゃねーか! 俺、引っかけられた?!)
でも高校時代の俺を第三者から見た場合、『棗への構い具合が友達としての度を越してる』と思われていても、『そうですね』と返事せざるを得ない。
それくらい俺は、彼を構い倒していただろう自覚がある。
しかしその第三者から改めて、『他校に彼女がいたお前だけど、疑惑の目を向けるくらい本心ダダ漏れだったよ』と指摘されると……穴があれば入りたいほどすごく恥ずかしくて、顔が熱くなる。
そしてこんな風に赤面する自分も恥ずかしくて、更に頭部へ血がのぼり、羞恥のスパイラルが止まらない。
「特別な好きか男同士の友情かは知らないけど、アンタたちの関係、見ててわりと好きだったから」
吉永はニヤニヤはしたが、真っ赤になる俺をからかったりはせず、話の間に空になったコーヒーゼリーの器を脇によけると、頬杖をついて俺を見る。
「お、おう……そうか……」
一方俺は吉永の顔がまともに見られなくて、うつ向いてコーラを飲む。
「それにアタシ、高校生のころ……棗のこと、ちょっといいなーと思ってて」
「え? マジで?」
なっちは綿矢ほど突出してはいないが、白雪姫が似合うくらいの容姿だし、対人関係において積極的ではなかったが、話しかけてくる相手を無下にするような性格でもない。
だから彼はひそかに女子からモテており、告白もされていたようだ。
けれど俺が知る限り彼は高校三年間、告白してきた誰ともつきあわず、最終的に仁井村なんていう最低教師に捕まってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!