チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)⑤

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チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)⑤

 俺は大学を卒業し、私立命翠学園高等学校に就職した。  業務内容は『保健の先生』――養護教諭である。  ちなみに命翠学園は俺の故郷にはなく、つまり高校生まで育った土地へ戻ってでの就職ではない。 (地元で就職するってことは、実家へ戻るということにほぼなるじゃん? ……一人暮らしになれると、窮屈そうでなー)    長期休みにちょっと帰るくらいが、家族も俺をちやほやしてくれるし、自分的にちょうどいい。   (それになっちも、地元へは戻ってないみたいだし)    ゴールデンウィークに帰省した時、地元で就職した友人たちに探りを入れてみたが、なっちについては相変わらず、新しい噂すら耳にすることが出来なかった。   (まぁ俺がなっちでも、地元には戻らない選択をすると思うしなぁ……)    教育実習打ち上げ時の暴言糞野郎のせいで、なっちは『自分と仁井村との交際が他者へ知られてしまっている』と、気がついただろう。  どこの誰が、何人くらいがこのことを知っているかは定かではない。  定かではないが――主に噂が広まっているだろう中心地かつ、自分を知る人間が多く住む土地へ、彼は戻ろうとは思わないだろう。  それに物凄く業腹なことであるが、仁井村は地元で、いまだのうのうと教師として働いている。  ……彼が故郷に戻らない理由は山ほどあっても、その逆はないのだ。   (死ぬまでになっちとまた会うこと、出来んのかな……)    成果ゼロのまま、俺は社会人一年目の盆休み、母校である高校の創立何十周年記念だかの、大規模な同窓会に出席していた。   (出身者全員参加可能の会だから、密かに端っこの方にでもなっちいねーかな? と、爪の先くらいは期待してたんだけど……やっぱ無理か。先輩や後輩になっちの情報持ってないか、さりげなく訊いてみても皆知らないみたいだし)    OBOGなら誰でも参加可能な会なので、開催会場はかなり広く、そこへ集まった人間の年齢層は、下は二十歳前後で上は初老までという感じだった。   「なぁなぁ、瀬尾!」    「なっちの情報を掴むためだけに参加したけど、案の定徒労に終わった」と残念に思いつつ、俺がソフトドリンクを取りに行っていると、背後から本日一緒にここへ来たオギーに腕を掴まれる。
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