チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)⑤

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「……よぉ。久しぶりだな、綿矢」  多少のぎこちなさを感じさせるものの、彼は口元に微笑みを浮かべていた。   (うわ、マジか。確かにさっきオギーが、『性格が丸くなってた』と言ってたけども)  知ってはいてもいざ目の当たりにすると、高校時代は無愛想で排他的ですらあった彼を知る身としては、その変わりぶりに驚いてしまう。   「瀬尾、俺のこと覚えててくれたんだな。嬉しいよ」 「学校一のモテ男を忘れるわけねーじゃん。高校ん時よりお前、イケメンになったんじゃねーの?」 「アハハ、過大評価すぎる。でも、どうも」    他にも数個便器が並ぶ中、わざわざ俺の隣を選んで話しかけてくる理由なんて十中八九、なっちの情報を得るためだろうなと察した。   「瀬尾は棗と仲がよかったと記憶してるんだけど、今も彼と連絡とってたりするのか?」 「ううん、全然とってない」 「そっか……」    綿矢は落胆した様子を見せた後、何故なっちを探しているのかという、既にオギーから聞いていた理由を説明したが、俺が答えられる返事は変わらない。   「なぁ、綿矢。高校の時から訊きたかったことがあるんだけど、訊いていい?」 「ん? いいけど、何だよ?」    用を足し終わり、便器前と同じく、綿矢と並んで手洗い場で手を洗いながら、俺は大きな鏡ごしに彼を見る。   「高一の文化祭の時、白雪姫の劇やったの覚えてる?」 「ああ」 「その時に白雪姫役と王子役だけ、無記名投票の推薦から決めるていう、ハイパー面倒な方法とったじゃんか」 「そうだっけ?」 「そうだよ。それで王子役がお前で、白雪姫役になっちが決まった」 「さすがに配役は覚えてる」 「白雪姫役の推薦用紙になっちの名前書いたの、綿矢だろ」    疑問ではなく断定、質問ではなく確認を、俺はする。 「……どうしてそう思う?」 「どうしてって――お前の相手役を争って女子内でギスギスさせないためとか、男が姫やった方が話題も笑いもとれるとか、頭いい綿矢なら考えるかな? と」    認めさせるため、俺は適当なことを言う。  いわゆる誘導尋問だ。
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