チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)⑤

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「……うん。まぁね。正解」 「おっ!当たった!やったね!」  綿矢は答えを迷う素振りを見せたが犯行を認めたので、俺は正解を喜ぶふりをしながら、「もうひとつの疑惑も絶対に黒だな」と、当時は「まさか!」と思ったことへの確信を深める。 (『たぶん王子に選ばれるだろう自分の白雪姫は、どうせなら片想い相手のなっちがいい』とか考えて、推薦したんだろ? だから、魔が差したか計画的にかは知らないが……これは絶対に本番の時、キスしてやがったな)    俺は改めて久しぶりに、『綿矢はライバルである』と強く再認識する。  ――彼も俺をライバルだと思っているのかは、高校時代も謎だったが、この時点でもよく分からないままであったが。   「もう帰るのか?」    トイレを出たところで、「じゃあな」と俺が片手を上げれば、綿矢が驚く。   「おう。これから別の用があるから帰る」 「ふぅん。相変わらず人気者で忙しいんだな。うらやましいよ」 「人気者じゃねーし! 美女盛りだくさんな合コンに呼ばれまくりだろう綿矢の方こそ、俺はうらやましく思うね!」 「瀬尾が考えるような大当たりの合コンになんて、呼ばれないよ。俺はノリが悪くて、面白味に欠けるから」 「綿矢は文武両道才色兼備なんだから、それくらいのハンデ、屁でもねーだろ。――てことで、俺はお先に失礼させてもらいまーす」 「あっ、瀬尾! 少しだけ待ってくれ!」    本音とお世辞が混じる会話の後、今度こそ帰ろうとした俺を綿矢は慌てて引き止めながら、ズボンの尻ポケットから何かを取り出した。   「これ」    取り出されたのは黒色の小さな革製品で、綿矢はその中から一枚の白い紙を引き出し、俺へと差し出してきた。   「俺に名刺? ――綿矢お前、同窓会に営業しに来たのか?」    白い紙には綿矢の勤め先らしい、有名な大企業の社名や彼の名前などが印刷されていた。   「違う。そうじゃなくて……もし棗に会ったら、連絡先聞いて、俺に教えて欲しいんだ」    俺が名刺から顔を上げれば、綿矢は真剣な表情でこちらを見ていた。   (コイツ、俺もなっちを探してることを知ってる? それとも知らない? ……今までの発言や態度的にまだ知らない、か?)
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