チャラ男猟師と不機嫌な白雪姫(SS)⑤

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 *  星宮琥珀という『女王』と、その『守護者』で『狂犬』の小南宗一郎が高校を卒業した翌日、俺はいつも通りに保健室で仕事をしていた。   (俺は賭けに負けるだろうなぁ……)    俺はパソコンのキーボードを叩く手を止め、椅子に座ったまま伸びをする。   (二月のあの日に俺が賭けを提案して、なっちがそれを承諾して、昨日それのスタートボタン押しちゃった時点で、俺の敗北は決定事項だけどもさ)    小南は約一年待たされる程度で、なっちをあきらめたりはしない。  棗哲也に恋をする同類として、それは絶対である、と俺は確信している。   (……けどまぁどうしたって、ガッカリするよ。なっちに対して三回目の失恋だけど、慣れねぇよ)    同じ相手へ三度繰り返した失恋の内訳――最初は仁井村との噂を知った時、二度目は十二月に告白兼求婚をした時、三度目は賭けがはじまった昨日。 (万一、小南が一年待てずになっちへの恋を捨てたとしても、そうなれば俺は奴を軽蔑するだけだし、なっちが俺の腕の中へ落ちてくるだけだから、予想はむしろ外れてくれていいけどな)    近くに置いていた、メロンソーダのペットボトルへ手を伸ばす。   (――あ。いや駄目。それは駄目! いいけど、やっぱ駄目! そんなオチになったら、なっち可哀想じゃん! なっちを泣かしちゃ駄目だから! 好きな相手が悲しむとか、超不本意な事態だから!!)    俺以外誰もいない保健室でぷるぷると左右に顔を振り、考えを否定する。   (油断してたよなぁ。『なっちは仁井村とのことがあるから、生徒のことは好きにならない』なんて決めつけて。この読みはたぶん間違ってはなかったけど……『恋に落ちる相手はコントロール出来ない』とも、分かってたじゃん)
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