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ふぅと息を吐き、ペットボトルの蓋を外してメロンソーダをひと口飲む。
(俺の敗因は、この油断と慢心と、往生際の悪さですよねー)
幸運にも再会を果たせた俺は「絶対になっちを逃すまい!」と、頻繁に彼を飲みや遊びに誘ったり、恋人よりマメに連絡をとったりして、積極的に関係を持つようにした。
その甲斐あって俺は現在、『なっちの親友!』と言っても本人に否定されないくらいには親しくなれた、と思っている。
しかしこの状態は、『親友』という単語が持つ意味以上に、俺をうぬぼれさせた。
(俺はなっちの恋人になりたいのに、そこで満足したような気になってたから、今負け犬やってんだよなぁ……。バーカバーカ! 俺のバカー! 本当バカー!!)
『親友』ポジションは、俺のなっちへの独占欲を歪に満たしてしまい、俺はそこで立ち止まってしまったのだ。
本当に座りたい椅子は、その椅子じゃないのに。
(なっち限定のゲイでバイでーす! 昔からなっちにガチ恋してまーす! ……と、さっさと告白すりゃよかったんだよ俺は!!)
ストーカーにも似た行為をするほど彼を愛していたのに、小南が現れるまで『告白』という最後の一線を越えることが出来ず、グズグズと『親友』に甘んじていたのは、本当に俺の落ち度で怠慢だ。
(行動に移すの遅すぎな自業自得で失恋して悲しいけど、仁井村に盗られたと知った時よりかは何百倍もマシだな。小南は仁井村みたいなクズじゃないし)
一回り以上年下で賢くないヤンキー小南が約一年後、俺の大事ななっちの恋人になることに、不安がないわけじゃない。
けれど「ナツメセンセにフラれた」と、意気消沈した顔でここへやって来て愚痴った彼は、最終的に俺へこう言ったのだ。
『オレはガキだし、もう卒業しちまうから、セオセンセがムリヤリにでもナツメセンセを幸せにしてやってくんない?』
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