二年生、秋~前編~

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「うっそ?! マジかよ?! 星宮がいい加減小南をうざがってキレた、とかじゃなく喧嘩?!」 「いやだから、詳細は知らないって。そういう噂の事情に詳しいのは瀬尾の担当だろ」    あの四ツ橋が困惑した顔で「二人が喧嘩したようだ」ということを言った時、俺は文化祭以降で一番最悪だった、金曜日の小南の機嫌の理由に合点がいった。   「うーむ……。月曜日から生徒とかに探り入れてみっかな。この土日で仲直りしてくれることにこしたことはないけど。――あー! 明日からまた月曜かよー! 仕事行きたくねぇぇえぇぇ!」    急に明日からまた一週間、出勤しなければいけない現実を思い出した瀬尾は頭を抱えて叫ぶ。   「うるさい。近所から苦情が来ても知らんぞ」 「ツラいよー……。彼女にフラれても、いつも通り来る月曜が憎いよー……」    ぐりぐりと俺の肩口に瀬尾が額をこすりつけてくる。   「給料のためだ。耐えろ」 「今日、泊まっていかね?」    顔を上げた瀬尾は、擦って赤くなった額と酔ってとろんとした目を向けてくる。   「泊まらない」 「可哀想な俺のために、明日は同伴出勤してくれよぅ!」 「ヤダ」    同伴出勤とは、キャバクラ等でホステスが客を連れて出勤することを指すのではなかったか、と思いながらふたつ目の要望もはねつける。   「仕方ねーなー……キスしていい?」 「何でだ?! 駄目に決まってんだろ?!」    横から俺にガシリと抱きつき、目をとじて唇を突きだし、顔を近づけてくる瀬尾を必死で押し止める。   「なっちぃ~~! 愛してんよ~~~~!」 「俺は巨乳の彼女じゃないぞ?! 離せ! この酔っぱらい!!」    最初からハイペースで酒を飲む瀬尾を止めなかったことを後悔しつつ、「今日何時に帰れるかな……」と俺はため息をついた。
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