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「でもあの美形ぶりなら、もう決まったも同義だろ。アイツの姉ちゃんてモデルのさんごだろ? ついでに自身もモデルだって?」
「らしいな。よく知らないけど」
星宮は入学初日から『姫』確定とささやかれるのも納得な、顔もスタイルも常人とは一線を画す華やかな線細めの美形だ。
俺はゲイではあるが、少女漫画のヒーローみたいなタイプの星宮は好みではないので興味はない。
「なっちぃ、自分とこの生徒だろ。も少し興味持てよ。佐藤先生なんて『久々に後光が差してみえるレベルが入学してきた!』てウハウハしてたぜ?」
「星宮に佐藤先生に気をつけろ、て言わないとだな」
星宮は姉の存在やモデルという肩書き含めて学校中で話題となり、日々多くの様々な視線を集めている。
副担任としてはそれ故の問題が起きないか心配で、飛び抜けた美貌は厄介なファクターにしか思えない。
「星宮が佐藤先生に気をつけるより、佐藤先生の方こそ狂信者だか下僕だか囲いだかパシリだかの……ええっと、あの無駄にでかくて目つき悪い奴、名前何だっけ?」
「――小南な。小南宗一郎」
一目惚れをしてしまった相手の名前を急に言わされ、その動揺を隠すようにポケットをあさって煙草を取り出し、火をつける。
「そーそー! 小南だ、小南! そいつに気をつけた方がいいんじゃーねーのかと思うけどな、俺は」
「生徒の名前、大声で連呼するなよ」
「なら野獣て呼ぶな。美女と野獣の、野獣」
「酷くないか?」
「名前駄目ならそれでいいだろ。教員間でも大体それで通じるし」
「それはそうだけども……」
誰にも言うつもりはないが、一応恋をしている相手を馬鹿にしたあだ名を呼ぶのは戸惑われる。
「まぁ奴が最終的に美女の心を掴むかは知らないから、例えが適切かは知らんけども。でも外見はそんな感じだからさぁ」
「奴のおかげで楽させてもらってるから、最終的にどうとかは別に」
小南と星宮は小学校時代からの幼馴染みらしく仲が良く、小南は星宮の外見や肩書き目当てに近寄ってくる害虫を日々威嚇し蹴散らしている。
「楽、ねぇ。――美女のいうことしか聞かないし、どこでも美女について回るし、どう見ても飼い主にしかなつかない猛獣だよアレは。野獣訂正、猛獣だ」
健康診断時のプチ騒ぎでも思い出したのか、瀬尾はビールを飲んでからため息をついた。
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