二年生、秋~前編~

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「そこは星宮にも事情があるらしいですから」 「あぁその話は私も聞いたことありますが――漫画みたいな話ですよね。星宮のモテっぷりに、私も爪の先程度でいいのであやかりたいもんです」    男女ともに非常にモテる星宮が今まで恋人を作らなかったのは、彼の中学時代最後の交際に問題があったかららしい。  彼と同じ中学出身の生徒に聞いた話によると、中学時代最後の彼女は大人しい女生徒で、告白をして見事星宮の恋人の座を射止めたとのことだ。  しかしその結果彼女は、「どうしてお前みたいな陰キャが!」と嫉妬した他の女生徒たちからのイジメを受けることになった。  二人はイジメという問題を解決するには別れるしかない。という最終結論を出し、後味の悪い別れ方をした。  ――と、教えてくれた生徒は「女の嫉妬こえぇ!」と言って、話をしめたのを記憶している。   「自分が知る限り、今日はまだ騒ぎは起こしてませんが、小南の機嫌は変わらず良くないですよね」    どういう風のふきまわしで星宮が新しい恋人を作る気になったのか、その相手が誰であるのか――そういったことに興味はない。  が、彼の一挙一動はダイレクトに小南に影響するので、星宮に恋人が出来たことが、どう小南に波及するのかは見極める必要がある。   「あぁそれですか。……星宮と仲のいい勇井に聞いたんですが、星宮と小南は喧嘩してるみたいですよ?」    担任は声をひそめて、既に知っていた情報を教えてくれる。  だがそんなことはおくびにも出さず、俺は返事をする。   「へぇ。それはそれで面倒そうですね」 「一難去ってまた一難ですな……。でもまぁ星宮へつく虫が減れば、小南が虫たちをバルサンする回数も減るので、その後片づけの労力は減るかな? と」
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