二年生、秋~前編~

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 星宮に恋人が出来て我々教師の負担が減り、「中学時代の出来事で女が嫌いになってホモになってんなら、一発くらいヤらせてくれんじゃね? 星宮なら抱ける気がする(笑)」などと下品な発言をしていた奴らが全滅するのは、喜ばしい限りである。  しかし何人か本気で星宮に恋をしていた生徒を知っているので、失恋してしまった彼らには同情の念を禁じ得ない。   「小南と星宮の喧嘩ですけど、小南が星宮とマトモに喧嘩できると思わないので、そっちは比較的大丈夫かと考えてます」 「……まぁ、そうですよね」    手に持っていた残りのおにぎりを全部口の中に放りこみ、咀嚼しながらの担任の言葉に俺も同意する。  四ツ橋から報告を受けて、まず最初に俺も喧嘩の結末を考えたのだが、すぐに担任と同じ結論に至った。  小南が星宮に勝てるはずがないのだ。   「小南をホモだのゲイだのと生徒たちは影口叩きますけど、アレはそういうのではなく……妙な話ですが、本当に信仰に近いと私は思うので」    おにぎりを飲み込んだ担任は、真面目な顔で言う。   「信仰対象と喧嘩とか、難儀ですね」    俺は返事をしつつ、七月初頭に四ツ橋とした宗旨替え云々の会話を思い出す。  昔、二人の間で何があったのだろう? と、彼らと知り合ってからずっと不思議に思っている。   「だから喧嘩してもそう長くは続かないとみますね。小南は信仰を捨てない限り、謝って許してもらうしかないんですから」    そう言って担任は「ようやく胃薬から解放される」と笑った。
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