559人が本棚に入れています
本棚に追加
二年生、秋~後編~
星宮に恋人が出来たという騒ぎから約二週間後の火曜日の夜、俺は久々に夜の街を目指して電車に乗っていた。
理由は単純、ひとりでゆっくり飲みたかったからだ。
(さて今夜はどこで飲もう? 前に瀬尾に教えてもらったバーにするか? 雰囲気よかったし。でも馴染みのところに顔出したい気持ちもあるし……)
電車を降り、頭の中で店の候補をあげつつ、ネオン街目指してぷらぷら歩く。
冬になって日の入りが早まったせいもあるのか、まだ宵の口の時刻だが、派手な電飾がえらく輝いて見える。
(…………ん?)
歓楽街に入ってわりとすぐにある、路地裏への入り口に座り込んだ人物がたまたま目に入った。
缶ビールを片手に持った、体格のよい若い男がうつむき、だらしなく地べたに足を投げ出して座っている。
夜の街としてはまだ早い時間ではあるが、場所的に既に酔いつぶれている人間は、そう珍しいものではない。
普段なら気にもとめないありふれた光景だったが妙に気になり、数メートル通りすぎたところでその理由に気がついた。
(さっきの小南じゃねーのか?! もしそうなら無茶苦茶マズイじゃねーか!)
小南本人であるか確認するため、慌てて来た道を小走りに駆け戻り、路地の入り口で泥酔している男を確認する。
――間違いなく小南であった。
「小南! オイ、小南!」
軽くなっている缶ビールを手から抜いて脇に置き、小声で呼びかけながら、小南の肩を揺する。
「…………うぅ……」
何回か呼びかけ、軽く頬を叩いたりしていると、小南が低くうめいた。
「おい小南、大丈夫か?!」
「……ナツメ、センセ……?」
眉間にシワを寄せ、うっすらと目をあけた小南は、酒臭い息で俺の名前を呼んだ。
最初のコメントを投稿しよう!