二年生、秋~後編~

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「全然軽くねぇよ! バカ! ……もうそれしかねぇんだよ!!」    小南は鼻をすすりつつも怒りの形相で、俺の肩を強い力で握ってくる。   「痛い痛い! 分かったから! 許してもらえそうな方法を先生も一緒に考えるから、色々ちょっとストップ!!」    彼が今望んでいるのはそれだろうし、予定していた流れに戻そうとそう言えば、小南は俺の肩から手を離した。   「星宮とどうして喧嘩したんだ?」 「……それは言えない」    まだるっこしいのは彼に合わないだろうと、まず知っておくべき核心に切り込むもやはりというか、小南は眉を八の字にして口をつぐんでしまう。   「どうしても? 誰にも言わないって約束しても?」 「ダメだ。絶対言わねぇ」    一応食い下がってみるが、視線を床に向けた彼はむっつりと押し黙る。   「そっか。――でも、死んで詫びるのはやめておけ」 「……だけどオレは、コハクにスゲェヒドイことをして……」 「命で償わないといけないほどの?」    左右の部屋から下手くそな歌声が聞こえる中、小南はスンと鼻をすすってうなづいた。   「ふぅん……重大だな。けどな、小南。もしこれでお前が自殺したら、先生は星宮を許せなくなると思う」 「あァ?」    星宮を否定する言葉に、小南が眉をつり上げる。   「それくらい先生にとって小南の命は、無茶苦茶大事だってことだ」  告げるつもりはないが、何しろ俺にとって小南は片想い相手だ。   (道徳だの倫理だの以前に、絶対に死んでなんて欲しくない! 星宮相手に何をやらかしたか知らないけど、少なくとも学校での奴は恋人も出来て元気そうだし、死んで詫びるほどのことなのか? それって相当でよっぽどだぞ?)
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