第二章

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「今日は、あなたの名前を決めたいと思います」 「私の名前?」 「今日はシワスさんにも来てもらってます」 「どうも」 「どうして私の名前を決めるの? 私の名前はもうアカリって決まってるでしょ?」 「アカリ、正直に言うと、それはあなたを拾ったカプセルに書いてあった名前なの。だから使っていたの。とりあえずにしろ、呼び名が必要だったから」 「クラシキさん、そんな言い方はちょっと」 「イツカ、いいよ。クラシキ、続けて?」 「あなたももう十歳になる。自分のことをちゃんと考えられるだろうから、この機会に、あなたが呼ばれたい名前に変えてもいいかと思うの」 「…………」 「今の名前がいいというなら、それでもいい。でも、今までにこんな名前がいいって言っていた名前に変えてもいいの。私たちが呼ぶ名前と、あなたが自覚する名前じゃ、意味合いが違うのだから」 「……そっか。色々考えてくれたんだね、クラシキ」 「ええ、大切な子だもの」 「イツカも、同じ考えなの?」 「ああ、これに関しては、俺も何度かアカリから聞いたことがある話題だったからな。クラシキさんと相談して、十歳になる時に相談しようということにした」 「なるほどね。二人の気持ちは、分かった気がする」 「それで、どうする?」 「私は、……今のままでいい。ううん、今のままがいい」 「……」「……」 「私、色々こんな名前がいいなーとは思うことはあったけど、その中でも一番、このアカリって名前が大好きなの。太陽みたいで、あったかい名前だから。それに、名前ってそんなに変えていいものじゃないと思うの。こっちがいいから、私の名前はこっちに変えるとか。そうしたら、今までの名前で呼んでくれてた時間が、なんだかモヤモヤするものになるような気がするの。無駄みたいな、それまでは私じゃなかったみたいに思えてしまう気がして。私は、今までの時間も、これからの時間も、大切にしたい。だから、私はこの名前のままがいい」 「……そう、なら、これからもよろしくね、アカリ」 「アカリ、これからもよろしくな。……すみません、ちょっと目から水が」 「ちょっと、二人とも、何で涙なんか流すの! ……私ももらい泣きしちゃうじゃん! ……うぅぅ」 「うふふ、いつまで経っても、泣き癖は治らないわね」 「これは嬉し泣きだ。だからめいっぱい泣いていい! いいぞアカリ!」 「うぅぅぅ、泣くぅぅぅぅ!」
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