第二章

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「すみませーん、宅配便でーす」 「はーい。いつもお疲れ様です、宅配屋さん」 「おお、これはこれはアカリさん。労いの言葉、ありがとうございます。今でも私のような運送機械が存在意義を見出せることなんて貴重ですから。疲れなんて何のその、いつでもお届けに上がりますよ」 「ははは、ありがとうございます。はいこれ、サインしました」 「ありがとうございます。失礼します」 「はーい、また~」 「アカリ、何が来たの?」 「旬の野菜の詰め合わせ、だって」 「ああ、そういえば注文したわ」 「……ねえ、クラシキ」 「ん?」 「何回か聞いたことあることなんだけどさ」 「何よ、もったいぶらずに言いなさいな?」 「何で、この世界に私以外の人間がいないの?」 「十五になったのだから、そろそろ本当のことを教えなきゃとは思っていたの」 「うん」 「実はね……」 「そんなことがあったんだ……でも、それならなんで私は生きてるの? それに、なんでクラシキやイツカは動けてるの?」 「あなたは生まれて間もなく、デバイスを埋め込まれる前に誰かに助けられたのだと思うわ。その人がカプセルにあなたを入れて助けた。ということ。 私はここを作った人が独自に開発したものだから、国の規定とは少し違う回路になってるの。そして敵国からの攻撃に耐性がある回路だった。これはほぼ運ね。イツカも同じようなものだと思うわ」 「……そう」 「でも、いきなりどうしたの?」 「うん。……私ね、旅に出てみようかと思うの」 「……え!?」 「私以外に人間がいない世界。そこがどんななのか、私は知りたい」 「…………」 「すごく自分勝手なのは分かってる。道中どうするかとかもまだ決まってない。だけど、私はしたいの」 「……そう。あなたがそんなことを考えてるなんて。思ってもみなかった」 「クラシキ……」 「わかったわ。いつくらいに出発したいの?」 「え。えっと、今月末」 「あと一週間ね。それなら十分に準備できるわね」 「クラシキ?」 「あなたの門出、私が祝わなくてどうするのよ」 「……クラシキぃぃぃ」 「ああ、もう。またこの子は。はいはい、泣くのはやめなさい、アカリ」
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