第三章

4/5
前へ
/23ページ
次へ
「zzzzz」 「……まだ寝とるか。老いると朝が早くなっていかんな」 「……どうかされましたか?」 「五十六型……。ここじゃなんだ。縁側で話そう」 「そうですね」 「驚いたぞ。まさかお前が、アカリを連れてここまでくるなんてな」 「私も驚きました。まさかまだ残っていた生体反応があなただったとは」 「ふん、ひとこと余計なのは昔から変わっとらんようじゃな」 「あなたも、カッとなりやすいのは変わりませんね。その喉も」 「……」 「耳裏の生体埋め込みデバイスを『気持ち悪い』と半ば強引に引きちぎり、その後遺症で声を失う。しかし自力で外部補助デバイスを作って声を取り戻した天才」 「そんなことを言っておっても何も出んぞ」 「わかっています。……あの子に、孫に素性を言わなくていいんですか?」 「ふん、分かり切っておろう、五十六型。今のあの子にその情報は不要だ」 「しかし、人間には不要でも持っておくべき情報があると、私はあなたに教わりました」 「あぁ、……そうだったか」 「あなたも共に来ますか? アカリの成長を間近で見られますよ」 「いや、いい。わしは、この家から離れたくはない」 「そうですか。……残念です」 「さて、空が白んできた。もうじき、朝だ」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加