プロローグ

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 世界中のそこかしこに、機械がいた。 「皆さんの安心安全な未来を、IoTと共に」  そんな謳い文句のCMも聞きなれて久しい現代。  世界中のそこかしこに、機械がいた。イヤホンのように小型のもの、人型のもの、ゴミ箱大の円柱型のもの、体内に入れられるカプセル型のものなど、形は様々であり、用途も様々だった。  人間に装着され日々のサポートをするものもあれば、道端の掃除や迷子の誘導のために町を駆け回るものもいた。  そして、人と人の戦争に新たな戦力として投入されるものもいた。  世界がどれだけ表面上平和になっていても、戦争は終わらない。まるで自分たちの平和が本当の平和なんだと安堵するために仕組まれているように、必要悪のように戦争は世界のどこかで続いている。  それどころか、戦場は現実世界だけでなく、幅広いインターネットにも及んでいた。敵対国のサイトは軍の方針により閲覧不可能になり、軍のセキュリティをかいくぐって閲覧しに行けば逆探知され中継端末にされ、セキュリティとウイルスとの弾幕戦が始まる。  世界中のそこかしこに、機械がいた。それはすなわち、いつ敵になるか分からない存在を身近に置くことに等しい。  しかし人類はそれを排除しようとはしない。それがなければ生活に貧するほどに、世界は機械に溺れていたから。  身の回りの機械を誰も排除しようとはしない。それは敵味方問わず同じこと。となれば。  世界中のそこかしこに、機械がいた。機械があるという事はそれを作る人々もいた。作る人々がいるという事は、それの弱点を知る者もいた。  各国はこぞって秘密裏に優秀なプログラム技術者をスカウトし、相手国の使う携帯端末や生活支援ロボットのシステムに侵入し、思い通りに操るプログラムを作らせた。 同時進行で現在使用しているデバイス等のセキュリティホールの発見、アップデートも行わせた。史上最大の鼬ごっこだ。  紆余曲折ありながらも各国でそれらは完成し、あとは指導者のエンターキー一つですべてが完了する段階となった。
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