第四章

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「ありがとうございました」 「いやあ、ほんとによかった。そちらは日本の機体かな?」 「その通りです。というより、あなた人間ではありませんね?」 「え?」 「そうですね、私は中国で開発された独自作戦行動型戦闘機。そのAIです」 「……ほへえ」 「だからこそ、彼らとは違うアルゴリズムで動いているのですね」 「はい、というか私は人間のアルゴリズムを模して造られたので、現在のどの機械とも違うアルゴリズムだと思います」 「救援、感謝します」 「いえいえ、私はただ、我が国の恥を作りたくなかっただけのことです。あなた方も渡航許可を取られていないので、本来なら処罰したいくらいですが」 「え!?」 「ですが、今は状況が状況です。自衛のために仕方なかったのだと推測します」 「的確な推測、感謝します」 「……ねえ、あのロボットたちが持ってたのは、銃?」 「おや、あなたは銃を見るのが初めてですか?」 「うん、私の周りのロボットは、武器を持ってなかったから」 「そうですか。確かに、日本ではロボットへの銃器所持は認められていませんね」 「なんで銃なんか持ってるの?」 「それは、守るためです」 「守るため?」 「ええ。何かを守るためには、力が必要です。銃、もっと言えば私のような戦闘機や、爆弾などの武器は、その存在を見せることによって相手を委縮させ、攻撃を起こす気をなくす効果があります。矛を持って盾とするのです」 「でも、一歩間違えば戦争にもなるよ?」 「ええ。無謀、または我々と拮抗するような力を持つ者たちは、いくら武力を見せてもひるまず向かってきます。そのときは、こちらも応戦するしかない。これも、守るためです」 「箱庭にある本を見ててずっと不思議だったことがあるの。何で人は戦争してたのかなって。戦争なんかしなくても、一つのものが欲しいなら二人のものにすればいいのに。何か嫌なことがあるなら、話し合えばいいのに、って。戦争して、お互いの守りたいものがだんだんなくなっていって、そっちのほうが辛いのに、って」 「……そうですね。それは至極まともな意見だと思います。私も、その意見には同意します。しかし、正論だけで世界は回らなかったのです」 「なんで?」
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