第四章

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「なんで、なのでしょうね。最初はみな和気あいあいとしていたものが、いつからか人の歴史は戦争の歴史になった。それは人間が知能を持ち、技術が発達し、政治が複雑化していくほどにひどいものになっていった。みんな、本質が見えなくなったのかもしれません。ずっと話し合いをしてもまとまらない。自分の意見が聞き入れられない。または、どうしてもうまくやれない相手だと判断する。そういう諸事情が絡みに絡んで、戦争は起こる」 「……」 「でも、人も平和を願っていないわけではなかった。ノーベル平和賞というものが昔はあったのです。そこでみな、平和への一歩を歩んでいた」 「でも、それでも戦争はなくならなかった。争いは絶えなかった」 「……そうですね」 「なんで平和を願いながら争うの? 争うこと自体が平和から一番遠い行為だと思うのだけど」 「アカリ様。彼にあたっても、何にもなりません」 「……っ。ごめんなさい、私、熱くなって」 「いえ、あなたの思い、機械ではありますが、私に響いてきました。私も、戦闘機という身でありながら、私が投入されることはなければいいのに、と思っていました。でも、今日あなたたちを守れた。戦争があったから、あなたたちが危険な目にあったことも事実。ですが、戦争があったから、私が生まれ、あなたたちを守ることができた。詭弁ですが、これも真実です」 「……うん」 「あなたはとても難しい問題を考えている。それは一人で考えるには難しすぎるような問題です。焦らず、じっくりと考えて、あなたの答えにたどり着いてください。そしてその暁には、あなたの答えを実行してください。考えは、実行されて初めて存在するものですから」 「わかった。私、頑張るよ」 「そろそろ私の燃料が底をついてきました。それでは、これで」 「あ、最後に、あなたの名前を」 「……私は、CHN-52 鳳凰です」 「鳳凰、じゃあね!」 「ええ、あなたが、良き答えに巡り合えますように」
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