0人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章
異変から一週間後。
空を覆っていた雲が裂け、神々しい光のベールが地上へと垂れる。
地上を歩く白銀の人型機械は、空からの光を跳ね返しながら進む。
大抵の男を上回る身長と重々しくしっかりしたボディは、人が見たら相当の迫力があっただろう。
と、とある家と家の間で、人型機械は立ち止まった。
「全体発信。こちらKYM-1205 K-1路地にてカプセルに内包された、孤児と思しき人間を発見。あやしにかかる」
人型機械は、赤子を内包した恐竜の卵のようなカプセルを抱き上げる。
中の赤子はすやすやと寝息を立てている。
「個人返信。KYM-3925 了解した。そこから一番近い保護施設の情報を検索……確定、名称、アイビーの箱庭。位置情報をそちらに送信する」
「先ほどの全体発信を個人発信へと変更。援助感謝する。これより、その保護施設に向かう」
「相手方とのコンタクト成功。快く受け入れるとのこと」
「アポイントまで取ってくれたのか。KYM-3925へ、お返しは何がいいか?」
「そんなものはいらない。貴重な人類の生き残りだ。それを救えることが、もうすでにお返しと言えよう」
「そうか。それでは」
「ああ、それじゃあ」
人型機械は、通信を切るとゆっくりと歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!