Chapter.01

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 / / /  VA/R(バアル)というコンテンツがある。正式名称を、ヴァリアブル・オルタナティブ・リアリティ。名前から分かるとおり、それは現実を認識するための技術を指した言葉だ。  「脚部破損……ッ! テルマまだいける!?」  『破損分補填/パス開通! 全体のリソースから活動限界までの時間を逆算――出たよルイちゃん! あと40秒フラット!』  「上等!」  バランスの失逸、重力に引かれる感覚、しかしスラスターが豪快に火を噴く。  頭を過ぎるのは姿勢制御のこと、電磁投射ユニットの残弾、突き放された敵との彼我距離――うん。いける。  体勢を持ち直す。枝くれに似た華奢な身体に、肩の高さでぐるりと輪を描くシルバーのリング。茨のような突起が等間隔で生え、胸の部分にある衝角みたいなスタビライザーと結合している。  「いけ、アイリス!」  かけ声と共に突起が数瞬、輝く。するとリングの下部から黒くたなびく物が出てきて、身体のほとんど――機体の大部分を覆う。まるでポンチョか、マントのようだ。  「目標視認、指向位置固定! 重力反転加速開始!」  にわかに黄色い、幾何模様の円環がマントの上を走査して、落下を続けた機体を押しとどめた。地面にぶつかるすれすれでを飛行し、眼下の木々と山肌とを掠める。  
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