105号室の肖像画

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 ドアには鍵がかかってるし、チャイムを鳴らしても返事はないしで、母親が右往左往しているところに、大家がマスターキーで鍵を開けた。二人して中に入るが、部屋はもぬけの殻だったんだよ。押入れにも、トイレにも、何の気配もない。母親が、確かに息子はここに来たんでしょう? ってものすごい剣幕で聞くから、大家はその通りだと答えた。間違いなく契約書にサインをもらって、三か月分の家賃を預かって、この部屋を貸したのだと。ちょっと外出しているだけかもしれませんよ、というと母親は矢も楯もたまらずといった体で、部屋を出て行った。
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