第1章

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昔この名称で使われた薬を服用していた妊婦から奇形児が産まれ、その催奇性が大きな社会問題になった事は有名な話だ。 非バルビツール系の睡眠薬イソミンや妊婦のつわり防止に使われたプロバンMなどが日本で認可、発売されサリドマイド児と呼ばれる奇形児が次々を産まれて日本や世界においてショッキングな薬害事例が多数報告され、因果関係もはっきりしないまま製造、発売禁止となった。 フーヤは、この頃から自分のクリニックでの医師としての仕事と家庭内のチカとの義務的な子作り作業、加えて一向に改善しないチカの不眠症への対応で心身共に疲弊しきっていてフーヤ自身も自ら処方箋を書いて抗うつ剤や安定剤を常用するようになる。 チカは、長引く不眠症と子作りへの焦りから次第に感情をあらわに時にヒステリックにフーヤに当たるようになる。 その様子は、日に日に異常な姿に変わっていき、遂には 「この、ヤブ医者め!」 「役立たずのインポ野郎!」 などの汚らしい言葉を毎日吐き出す半狂乱状態に陥っていく。 フーヤは、子供が出来ないうちにチカと離婚しようと考えるようになっていく。 しかし、半狂人と化したチカとまともな離婚の話など出来るはずもなくフーヤは次第にチカへの殺意にも似た感情を抱くようになる。 一年後、多くの患者を助けてきたフーヤとチカはスローライフメンタルクリニックを閉院する事に決めた。 もはや、フーヤとチカ自身がスローライフメンタルを学び、実践する必要があった。チカの不眠症は、改善されず子作りも一向に捗らなかった。 フーヤとチカは、千葉市のフーヤの実家近くに引っ越しをする。 後にフーヤが開院する闇メンタルクリニックの場所である。 美浜区の高洲の閑静な住宅街でフーヤは、合法の薬では治療が困難な精神疾患患者を対象に彼の薬学の知識全てを使ったオリジナルブレンドの強力な薬を様々なタイプで処方するスタイルに変換した。 最初の患者は、他でもない彼の妻であるチカだった。 フーヤは、まず強烈な陶酔感と多幸感を得られるように様々な薬を慎重に細かく計算しながらブレンドしていく。 中には、末期がん患者にしか使えないモルヒネ様の麻薬も配合してチカの半狂乱的ヒステリックな感情を抑える配合に仕上げていく。
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