第1章

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後は、ぐっすり眠れるように通常全身麻酔やアメリカでは死刑囚の死刑執行時に使われるチオペンタールを極極微量加えて、最後に友人に頼んでいた実験用のマウスに投与して様子を伺った。 薬剤を投与されたマウスは、最初こそ麻薬が効いたか元気に跳ね回っていたが暫くすると意識を失うかのように動かなくなった。 「チオペンタールが強すぎたか?」 フーヤは、全身麻酔薬を更に少なくして別のマウスに投与する。 今度は、うまい具合に薬が効いた様子がマウスから見てとれた。 配合を自らのパソコンからUSBメモリにコピペして何度か作っては、マウスに投与を繰り返していた。 マウスに投与して最適な配合を見つけたフーヤは、チカの体型や体重、これまでの薬歴をしっかり考慮してハードカプセルに詰め込むとそのカプセルを一週間分作り、パソコンの電子カルテの中からチカのカルテを出してひたすらキーボードで打ち込みを始めた。 最初の投与は、三日後の夜九時。 チカには、製薬会社からの新薬のサンプルと言い聞かせて服用させるつもりだった。 四日後の朝、フーヤはふとベッドの隣で眠っているはずのチカが居ない事に気付き起き上がった。 「チカ!」 「おっはよ~~!ダーリーン!」 「どうした?」 「昨日の夜飲んだあの薬ね!もう、最高っ!」 「飲んでから、すっごく気持ち良くなっちゃって!」 「生まれて初めてよ!その後朝まで熟睡出来たの!」 「そうか、それは良かった」 「も~う、大好きっ!フーヤ!」 そう言うと、チカはフーヤに抱きついて朝からねちっこいディープなキスを何度も何度も繰り返ししてきた。 「ね~え、フーヤ」 「うん?」 「あの薬、製薬会社のサンプルって嘘でしょ」 「えっ!」 「私、全部知ってるわ。あれは、フーヤが私の為だけに作ってくれた薬でしょ?」 「ばれてたのか…」 フーヤは、少し気まずそうに朝のちょっと濃い目のコーヒーを一気に飲み干した。 「私、フーヤの赤ちゃん産みたい!」 「チカ、赤ちゃんは…」 フーヤは、この薬を飲んでいる以上は、例え妊娠してもおなかの中の胎児の姿は、とても正視できやしないものだと分かっていた。 フーヤは、赤ちゃんよりもチカの心の健康を優先した。 だから、赤ちゃんは諦めてほしいと言うつもりだった。もう少し時間をかけて薬を止めても眠れるようになってから、赤ちゃんの事を考えるべきだと思っていた。 「チカ、あの…」
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