第1章

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フーヤの顔面のケロイドを見た赤井はそう言った後、フーヤの顔を優しく、丁寧に触診して診察室にしているという部屋に案内してフーヤの最初の診察が始まった。 赤井は、驚くほど丁寧にじっくりと時間をかけて診察をした。 口の中にまださっきの麦茶の香ばしい香りが残っているのを頭の片隅に置いてフーヤは一つ一つ丁寧に問診に答えていった。 一時間くらい経っただろうか?赤井は、フーヤに真正面に向き合い 「治りますよ」と簡単に言った。 手術は、直ぐに施された。時間にして二時間半。手術が終わった。フーヤは、顔面を真っ白な包帯で巻かれた状態で麻酔から目を覚ました。 「一週間は、ここに居てもらうよ!」 赤井は、そう言ってどこからか持ってきたウイスキーをゴクゴクとさっきフーヤが飲んだ麦茶と同じように一気に飲み干した。 「か~!オペの後の酒はうまい!」 フーヤは、この一風変わった外科医を今まで接してきた医者やどんな偉い人間達よりも信頼し、尊敬するようになる。 一週間後、フーヤはその顔面に巻かれた包帯を赤井の手によって外される。 最初、ぼんやりとしてハッキリと自分の顔が認識できなかったが、暫くするとそこには、確かにきれいにケロイドが無くなって以前の男前のフーヤの風貌が鏡に映し出されていた。 「尻の皮、使わせてもらったよ!」 赤井は、そう言って今回の手術の内容をしっかりとフーヤに分かりやすく丁寧に説明した。抗生物質と鎮痛剤も処方して暫く週一回、診察に来るように言った。 「あの、支払いは…」 まだ、学生だったフーヤに支払える金額は限界が有ったがきれいな顔に戻して貰った以上は高額の支払いも両親に借りるなどして支払うつもりだった。 「あんた、これからきっと優秀な医者になるよ!その時に出世払いで構わないよ!」 赤井は、手書きのフーヤのカルテを見ながら笑ってそう言った。 フーヤの闇クリニックは全て赤井の影響そのものだったのかも知れない。 外科と精神科の大きな違いこそあれ、患者の為に最善と思われる治療を施す。ただ、フーヤの場合その手法自体は赤井とは対照的だった。 麻薬などの依存性の強い薬剤をオリジナルブレンドして患者に処方していたフーヤの医者としての在り方、高額な薬代を支払わせていた事もチカに危険を冒してまでも違法に作った薬を飲ませ続けていた事も含めてフーヤは自分の今の医師としてのスタイルが正しいのか?分からずにいた。
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