第1章

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「直近の記帳記録だと150万円。こんな町の寂れたコンビニのバイトでも結構貯まったなぁ……」 「取り敢えず、これが最初で最後という事なら十万円貸せるけど……」  僕は、そう言って二人の顔を交互に見比べた。 「助かるよ~!!やっぱりお前は、俺達の大切な親友だ!!」  タケルは、そう言って僕にいきなり抱きついてきた。 「ありがとう。光一君……」  アカネは、今思うとその時僕に何かを告白したかったのではないか?そんな意味深で複雑な表情を浮かべていた。 「な、やっぱり葉っぱは、最高だろう!?」  僕が拒み続けたマリファナをタケルは、強引に三人で吸わせる事に何故か?こだわっていた。 「……まったく。しょうがないなぁ……」  僕は、仕方なくタケルから渡されたマリファナを手に取ってライターで火を点けて、どこか懐かしいような感覚を覚えながら次第に酩酊状態に誘(いざな)われていった。 「タケル!あんまり葉っぱを強要するのは、良くないよ!!」  アカネは、自らもマリファナを平然と吸っていながら、タケルによって巻き添えを食ってしまった僕を心配してタケルに一喝した。 「懐かしいなぁ~、高校時代こうやって三人で葉っぱをやったよなぁ~!!」  タケルは、罪悪感など微塵も見せずにマリファナをしこたま吸っていた。僕は、久し振りに吸ったマリファナが効き過ぎたか?その場に居ながら、正体が、無くなりかけていた。  その後、三人は、あの高校生時代のようにセックスをした。アカネが、やけに興奮してしまっていた。 「ああ、こりゃあ母さんに丸聞こえだなぁ……」  僕は、マリファナといい、今、行っている性行為といい、母には、バレバレだろうと、もう諦めていた。タケルとアカネが性行為の後、またマリファナを吸っている間に僕は、お気に入りの「デイドリーム・ビリーバー」をリピート再生で部屋中に響き渡るくらいの音量で流し続けた。   日が暮れて、僕とタケルとアカネは、町の郵便局に向かった。さっき取引した二人の間に出来た赤ちゃんを下ろすための十万円をATMから引き出さねばならなかったからだ。 「はい、きっちり十万円!ちゃんと確認してね!」  僕は、よくも潔く二人に十万円も渡したのだと後になって思ったが、この時は、二人に久し振りに会えたのが、相当嬉しかったのだと思う。 「光一~!!」
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