第1章

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 鮮やかな浴衣姿に身を包んだ母が、夏祭りの会場に現れた。周囲にいた人たちは、この町では、一際美人で有名な母の浴衣姿に惹きつけられるように、そして食い入るように見つめていた。 「うわ~、やっぱり光一のお母さん、綺麗~!!」  アカネが、そう言ってから手を振って母の元へ走っていった。 「ホントに、光一の母さんは、こんな町に置いておくのは、もったいねえなぁ!!」  タケルが、露店で買った生ビールを飲みながら、そんな事を言っていた。  祭りは、かなり盛り上がっていた。意外とこんなに沢山この町にも人が住んでいるんだと僕は、感心してしまったものだ。 「田中先輩~!!」  どこかで聞いたような、いや、出来れば聞きたくなかったような女の子の声が確かに僕の耳に突き刺さるように響いた。 「田中先輩!!この前は、自転車で送って下さってありがとうございました!!」  谷 有希子。この前屈辱を味わされたコンビニエンスストアのバイトの後輩だ。 「何してるんですかぁ~、こんな所で……」  何してるも、してないも、このシチュエーションで夏祭りに遊びに来ている以外、何の理由があるんだよ…… 「まあ、何となくね……」 「何となく?」  谷 有希子は、露出の高い服装で、それなりに可愛かったけども、相変わらずの無神経さは、この日も健在のようだった。 「わたあめ食べたいなぁ~!!」  食べたいなぁ~、じゃねえんだよ!食べたきゃ露店で買ってくれば良かろうに。 「先輩!!わたあめ買ってきてくださいよ~!!」  僕の嫌な予感は、大的中だった。この女め、たかが、わたあめ一つすら僕に買わせるつもりなのかぁ……?
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