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「あぁ~!はいはい、思い出しました!下着泥棒の件ですね!」
「そうなんです……実は、私、モデルのお仕事をやっていて……」
「そうですかぁ、まあ、それだけお綺麗なら納得です!」
「どうも、最近、雑誌とかイベントとか、テレビのお仕事とかも、ちょくちょくいただくようになってから、仕事を終えて、マンションの部屋に帰ると、何というか……雰囲気が、変だなあ、と思いまして……私、下着は、部屋干ししかしないんですけど……気が付いたら、下着の数が明らかに減っていって……警察は、ちょっと、恥ずかしくて……」
「なるほど、そうだったんですか。犯人の心当たりは、ありますか?」
「いえ、それが、全くないんです……」
「全くない……ですか?」
「強いて言えば……」
「はい、誰か、いるんですね?」
「マンションの隣に住んでいる男性が……少し、怪しいんです」
「どんな風に、怪しいんですか?」
「私、部屋で猫を飼っているんですけど、その猫が、ベランダ伝いに隣の男性の部屋に入ってしまった事が、何度か有ったんです」
「ほおほお、それで?」
「その度に、わざわざ、その猫を抱っこして、私の部屋まで届けに来てくれたんです」
「ん~?いい人じゃないですか?」
「その時は、確かに、優しそうな方だなあと、思いましたけど……」
「その時は?その後、何があったんですか?」
「それ以来、何かにつけて私に付きまとうようになったというか……」
「例えば?」
「肉じゃが作りすぎちゃったから、食べて下さいとか、猫の美味しいエサを買ってきたので、どうですか?とか、最初のうちは、申し訳ないから頂いてたんですけど、回数を増すごとに、めんどくさくなってきて、ハッキリ言ってやったんです。迷惑ですって……そしたら、急にキレ始めて……」
「何か、されたんですか?」
「言葉で、いろいろ、まくしたてられて、最後に、言われた一言が……」
「はい、何と言われたんですか?」
「ここに住んでいられないようにしてやる、って……」
筒抜けの事務所内で、話をずっと近くで聞いていた遠藤一正は、そこまで、依頼人の山田という女性の話を聞いて、こう言った。
「あの~、兼松所長……」
「あん、何だよ!今面談中だぞ!」
「僕、犯人分かっちゃったんですけど……」
「はあっ!?」
所長では無くて、ミチルが素っ頓狂な声で一正に、キレ気味に睨みつけた。
「いいっすか!?話に入っても……」
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