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一正が、そう言って依頼人の山田という女性の元へ近づいた。
「お前、今の話で何が分かったって言うんだよ?」
兼松所長も、少し、面食らっていた。
「結論から、言いますと……犯人は……猫。ですね!」
「はい!?」
山田という依頼人の女性が、初めて、語気を荒めた。
「猫って、うちのブラピの事ですか!?」
「ハハッ、ブラピって……あっ、すみません!」
所長は、依頼人の猫の名前に思わず、吹きだしてしまった。
「はい、その……ブラピ?ちゃんが、犯人ですよ!」
「意味わかんないっ!!」
依頼人の山田という女性モデルは、完全にキレてしまった。
「遠藤、じゃあ、盗まれた下着は、どこにあるんだ?」
「はい、まあ、多分、隣の男性の部屋の中に、しこたま!」
「なんでやねん!犯人は、猫だって言ったじゃないか!」
「いや、だから、猫が、部屋干ししてある下着を、少しずつ、ハンガーから取って口でくわえて、ベランダ越しに、ほぼ毎日隣の部屋に持って行ってたんですよ!」
「どういう理屈だ!?」
「ブラピちゃんは、最初、好奇心からいつも鍵が開いていた窓を開けて、ベランダ越しに隣の部屋に忍び込んだ。ここまでは、良かったんです。問題は、実は、その隣の部屋には、恐らく、ブラピちゃん、多分オス猫ですね?が、気に入ってしまったメスの猫がいた。尚且つ、隣の部屋の優しい男性に、優しくされた上に、何度も美味しいキャットフードやら、貰っているうちに、ブラピちゃんは、もう一回隣の部屋に脱走すれば、メス猫にも会える。また、同じ経緯(いきさつ)で、優しい男性に、美味しいキャットフード貰える。ってなっていったんでしょう!ただ、手ぶらじゃ、申し訳ないと考えたブラピちゃんは、山田さん、あなたの下着をくわえて、賄賂(わいろ)代わりに隣の部屋へ行くたび、持っていった。」
「そんな……ふざけないでくださいっ!!」
依頼人の山田という女性は、怒り心頭だった。
「一正、それじゃあ、隣の部屋の男性は、ほぼ毎日、ブラピちゃんが持ってくる山田さんの下着を、返したくても、モノがモノだけに返しずらくなって……」
「はい、その代わりに、肉じゃがやら、キャットフードやらを持って行って、山田さんと少しでも、打ち解けてから、真実を話して全部下着を返そうと努力していたんです。多分、紙袋かなんかに入れて、大事に取ってくれてると思いますよ。隣の男性は!」
「あの……私……」
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