0人が本棚に入れています
本棚に追加
日本リーベル製薬会社が、新しく開発した新薬「ホライゾン」は、日本初の、人格障害、パーソナリティー障害に特化した、適応薬として、六年間の研究、開発期間を経て、治験の段階まで辿り着いていた。
博也は、治験の厳しい基準に基づき、医師から、しっかりと説明を受けた後、同意書にサインをして、その後身体検査等を済ませて、治験の為の準備を整えていた。
「俺が、社会性が全くないばかりに、ロクに働けない人間だから……」
博也は、年齢が、三十九歳。長い間、働けない状態が続いていた。それは、博也自身が、よく分かっていた事でもあった。
これから、二年間、博也は、新薬を服用しながら、月に一度くらいのペースで、病院の診察を受けて、経過観察を続けていく事になる。
「では、これが、最初の一ヶ月分のお薬です。必ず、主治医の指示通りに服用してください。もし……大丈夫だと思いますが、副作用のようなものが、現れたら、直ぐに、病院の方へ電話をして、主治医の診察と、場合によっては、精密検査等を受けてください。何か、分からない事など、ありませんか?」
薬剤師から、そう聞かれた博也は、首を横に振ってから、
「いえ、お金は……?」
「治験薬ですので、お金をいただく必要は、ございません!」
博也は、不器用に作り笑いを浮かべながら、
「なら、大丈夫です!」
そう言って、院内薬局から処方された新薬を、リュックサックの中に荒っぽく詰め込んで、病院を後にした。
病院を出た博也は、自宅に帰るためにバスに乗って、鼻歌を歌いながら帰宅した。
新薬の、「ホライゾン」は、クリーム色と青色のツートンカラーのカプセル型の徐(じょ)放剤(ほうざい)で、毎朝一カプセルを、朝食後に飲むだけで、その効果は、二四時間持続する薬効を持っていて、博也は、特に服薬に関して、大きな不安などは、感じていなかった。
こうして、「ホライゾン」の服薬を始めた博也は、特に大きな変化もなく、二週間服用を続けていた。
服用を始めて、三週間くらい経った日の朝、いつも目覚めの気分が、この上なく最悪だった博也が、何とも言いようのない爽やかな気分で、目を覚ました。
「あ~、なんか今日は、気分がとても良いよ!」
博也は、珍しく、髭(ひげ)を剃り、歯も磨いて髪形を整えて、しばらく入っていなかった、お風呂を自ら沸かして入浴まで済ませて、両親を驚かせていた。
最初のコメントを投稿しよう!