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「製薬会社として、患者様の疾病の改善こそが命なんだよ……このまま日本中にパラサイトなる引きこもりのニートの中高年を増やすわけには、いかないんだ。公には、出来ないが国からの開発費用援助の事もある。必ず成功させねばならないミッションなんだ!」
「はい、かしこまりました。我々も全力を挙げてこのミッションに取り組みます!」
「ただいま!!」
元気な大きな声で博也が、センターから帰宅した。
「おかえり!」
母の静江は、日に日に元気に活動的になっていく博也の姿を見ては、心から喜び、応援していた。父の達郎も、その意味では同じだった。
「母さん、今日は、エクセルで表やグラフを作ったよ!入力のスピードも格段に上がってきたんだ!ブラインドタッチの練習も始めたよ!」
博也は、生き生きとした表情で静江に少し興奮気味にセンターでの成果を報告するのが日課になっていた。
「おう、博也。おかえり!」
達郎も、博也の生まれ変わったような姿に嬉しさを隠せないようだった。
「父さん、治験の話を持ってきてくれてありがとう!今、俺は……人生が、生きていることが楽しくてしょうがないよ!毎日が充実して、新鮮で、将来への希望に満ち溢れているよ!!」
博也は、また少し興奮気味に、達郎に満面の笑みを向けて感謝の意を伝えた。
「そうか。お前なら、きっと成功する!頑張れよ!」
達郎も、少しだけ気分が高揚していたのか?声が上ずっていた。
治験開始から、三カ月が過ぎた。博也は、センターの訓練生の障害者の中でもトップクラスのビジネスマナーとスキルを身に付けていた。言葉の使い方も年相応になりセンターでの電話対応を任されるまでに成長していた。
「三木さん!!」
副センター長の神崎(かんざき)真奈美(まなみ)は、手に何かの資料を持ちながら完全に習得したブラインドタッチでタイピングの練習をしていた博也を呼んだ。
「神崎さん、またタイピングのスコアが伸びました!」
「凄いじゃない!あっ、あのね。ちょっとお話したいことがあるから筆記用具を持って奥のミーティングルームに来てくれる?」
「はい!今すぐ行きます」
「ホ、ホントですか!?」
ミーティングルームの中で、神崎は、博也にハローワークの非公開求人の紹介をしていた。大手の一部上場企業の障害者雇用。福利厚生などの勤務条件は、この上なく良かった。
「チャレンジしたいです!!」
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