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常日頃、うわ言のように先生のことを好きだとつぶやいていた私をよく知る友人たちは、ほんの数人私を見上げ、それからみんな面を上げて、次々に口を開いた。
「…私も」
「俺も」
「先生のこと大好きだよ」
「先生が担任で良かった」
「先生のおかげで化学も好きになれたよ」
「先生」
「僕も先生みたいになれるかな」
「私も、愛してるからね」
先生。
先生。
先生。
さざ波のようにあふれる、先生への想い。
言葉。
私だけじゃない。
みんな、先生にもらった『愛してる』を、同じだけの気持ちで返したいんだ。
「お前ら……ありがとうな」
先生は驚いた顔を見せて、それからくしゃりと破顔した。
「カッコイイ大人になれよ!」
わかってた。
先生が絶対に、生徒たちの中から誰かひとりなんて選ばないこと。
先生はちゃんとした大人だから、こどもの私たちを特別なたったひとりになんて選んだりしないこと。
そういう先生だから、好きになった。
尊敬したし、『愛してる』を信じられた。
ねぇ。
だから先生。
私のこと、忘れないで。
覚えていて。
私、きっと、自分のことを好きだって言えるくらいカッコイイ大人になるから。
そうしてまた心を伝えるから。
それまでどうか、いつまでも、変わらずにいて。
「大人になったお前たちに会えるのを、楽しみにしてるからな」
先生と、正面から目が、合った。
優しい笑顔。
私にだけじゃない言葉。
でも、きっと私に向けてくれたって、思うことにする。
信じるは、『愛してる』は、力になるって、あなたが教えてくれたから。
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