12人が本棚に入れています
本棚に追加
1年生
思えば、入学したての私ときたら、周囲に言われるがままに高校に入って、そこから先をどうしたらいいのかわからなくて、つまづいたんだ。
どうしたいとか、考えもつかなくて。
でも、何をしてもいいんだって、やりたいことを探して、見つけて、やればいいんだって、そんな単純なことに気づいたら、高校生活は楽しいばかりだった。
「ねぇ先生」
「んー?」
放課後の化学室。
運動部の賑やかさを遠くに聞きながら、ビーカーを1つずつ手に取り、流しで丁寧にくるくると洗う。
中学にはなかった部活に入る。
入学式のあの日、そう決めた。
科学部はまさにうってつけだった。実験も好きだし、何より高校生なのに部活で白衣なんてカッコイイ。
そういうのを、してみたいと思った。
科学部の活動は、あったり、なかったり。
部活動への所属は必須だったから部員の人数はそこそこいたけれど幽霊部員ばかりで、その日のメンツでやりたいことをやっていた。
たとえば、ろ過実験と称してコーヒーを淹れたり、校内で採取したものをプレパラートにして顕微鏡で眺めたり、今日みたいに一人のときは、備品の洗浄を買って出たり。
でも先生はそれで良いと言っていつも笑う。
やりたいことがあって、全力でやってるならそれが部活でもそうでなくてもそれで良いと。
ブレない先生の言動が私はとにかく嬉しくて、ずっと気になっていたことを、先生に訊いてみることにした。
「先生はカノジョ、いるんですか」
最初のコメントを投稿しよう!