2年生

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2年生

 何の因果か、2年生に上がってクラスが替わっても、担任は先生だった。  因果というか、本当のところ、理系クラスは2クラスしかなかったので、文理選択の時点で確率は2分の1だからそう低い可能性でもなかったのだけど。  ホームルームになかなか姿を見せない先生に業を煮やして、日直だからと訪った化学準備室。  先生はさっきの授業でやった小テストの採点に一心不乱に取り組んでいた。  いわく、もうちょっとで返せるからと。  たぶん、クラスの誰もそれを待ち望んではいない気はするけど、せっかくだから黙っておく。  ぞんざいに部屋の片隅に追いやられた丸椅子に掛けて、先生のもうちょっとを待つことにした。 「ねぇ先生」 「んー?」  気のない返事。  軽快に走るペンの、それから、めくる紙の音。  先生の指は、長いなぁ。 「先生はカノジョ、いるんですか」 「なんか去年もこんなことなかったか?」 「別れたってきいたんですけど」  あ。止まった。こっち見た。  予想外だ。  きっと見向きもしないだろうと思っていたから。  そして先生は宙に向かって怒って見せる。 「おい誰だ俺のプライベート垂れ流してるのは」 「フラれちゃったんですか?」 「…まぁ、そうなるかな」  採点の終わったらしい答案用紙をトントンと整えながら、いやにあっさりした声で、先生は言う。  なんで?  どうして?  先生に大切にしてもらって、お別れするなんて、私には訳がわからない。 「私なら、絶対ずっと先生を幸せにしますよ」  私の『ずっと』は、別れた彼女さんよりも『ずっと』たくさんで、これから先『ずっと』だ。  先生は、私にとって神様みたいな人で、神様が私を選んでくれたなら、どんなことだって無理じゃないって思えた。
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