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3年生
3年生になっても、担任は先生だった。
これはもう運命だ。
そうに違いない。
それくらい思ったって、バチは当たらないだろう。
だってもうすぐ、終わってしまう。
私の高校生が、終わってしまう。
「ねぇ先生」
先生と私の間には、向かい合わせの机がふたつ。
そこには、私の第一志望校の合格通知が乗っていた。
「カノジョならいないぞ」
「そうなんですか?」
訊いてもいないのに先生ったら、なんて迂闊なの。
純粋に、そういうところも好きだなって思う。
先生は、もちろん私の内心の喝采なんかわかるわけもなくて、傍目にもわかる上機嫌な様子で、熱弁を振るう。
「お前らが受験で大事なときに向き合わずして何が教師だ。俺だけ浮ついていられるか」
「熱いんですね」
「お前たちを愛してるからな」
ああ。
好きだなぁ。
先生の『愛してる』は、心地良い。
「――大丈夫ですよ」
「うん?」
キョトンとしたその表情が少し幼くて、わずかでも歳が近づいたみたいで嬉しくなる。
私の大学合格を手放しで喜んでくれている様子の先生は、きっと今だけは、私だけの先生だ。
「先生のことは、私がもらうことにしてるので、嫁き遅れとかは気にしないでください」
「ハイハイ。そりゃどーもな」
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