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浄愛師
軽いキスに応えながら、目を閉じた時だった。
「ついてるぞ、準」
首筋に舌を這わせながら、リョウが言った。
「えっ?」
「霊だよ。憑いてるんだ、お前に」
シャツをはだけられ、あちこち愛撫されている途中で、すでに身体は反応し始めていた。
「女だな」
どう答えていいかわからず、僕は自分を組み敷いている大柄なリョウをただ見返す。
――女の霊? 憑いているって……どういうことだ?
「安心しろ。すぐに祓ってやるから」
リョウは薄く笑って、切れ長の目を光らせた。
僕はひどく落ち込んでいた。絶対の自信があった科目で追試をくらい、いきなりバイトを首になり、おまけに些細なケンカがもとで最愛の恋人にふられてしまったのだ。
生まれて初めてハッテン場に行ったのも、そこで出会ったリョウとホテルに入ったのも、絶望の底なし沼をみじめに漂い続けていたせいかもしれない。いかにも有能そうな彼の容姿と、逞しいガタイと、落ち着いた物腰に惹かれたのは確かだけど。
「ち、ちょっと、あんた、何するんだよ?」
うつぶせになった途端、後ろに回した両手首にネクタイが絡みついた。きつく結ばれて、全く動かせなくなる。背後でリョウが衣服を脱ぐ音がした。
何だ? まさかSMか?
思わず声が裏返る。
「やだ。そういうのはやめてくれよ。ちょっと!」
硬い筋肉が背中に当たった。リョウにのしかかられた不自由な姿勢ながらも、僕は懸命に首を振る。
「あ、あう!」
うなじから腰の辺りまで、背骨に沿ってキスが繰り返された。リョウの唇が通った後が、ひんやりした線になる。
「落ち着けよ、準。相手は手強いんだから」
「て、手強い?」
「生き霊なんだ」
「何だ、それ……うっ」
今度は背中に何か冷たいものが垂らされた。少し粘度のある液体――リョウの指がそれを伸ばし広げては、まるで円を描くように皮膚にぬり込めていく。
「これ、何?」
「浄液だ」
「ジ、ジョウエキ? あんた一体何を、あっ、ああ!」
今度は身体を仰向けにされ、両方の乳首をつまみ上げられた。先端を強くひねられ、乳輪をなぞりながら粘液をまぶされ、思わず悲鳴が漏れる。
「ここ、ずいぶん感じるな」
「ち、違うよ、そんな」
そんなところが感じるはずはなかった。だって前に試したことがあるし、その時は全然だったのだ。
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