第一章 新世界への船出

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「ああ,一機ずつ同伴させられるよ.ランソルに降りるんだろう?」 「うん!何かお土産ほしい?」 「何か頼んでもいいのか?うーん,出発までに考えておくよ」 SYOはニヤっと笑うと,また後で,と言って通信を切る.ERICAは彼に向かってバイバイと言いながら小さく手を振った. 「だーってさ」 「ちゃんと報告して下さい」 「降下ポッドはいつでも問題なし.YUKIとYUKARIも一機ずつ投下出来るみたい」 ERICAは椅子にもたれかかって伸びをする.アンドロイド達は人間よりも頑丈に作られているが,パーツの磨耗や疲労は人間と同じように発生するため,それを人間の感じる痛みのような感覚で感じ取るようになっている. ただし,今彼女がしたような動作は人間らしく振舞うために組み込まれたランダム動作の一つであり,別段背面アクチュエータの異常を知らせるものではない.人間はこういった何気ない動作に人間性を感じていたらしい. そんな折,彼女はふと自分のした動作の意味を考える.何故自分は今伸びをしたのだろう.何となくそうしたかったからそうした,としか彼女には考えることが出来なかった.内部処理的には,状況に合わせた行動リストの中から乱数で適当な動作を呼び出したに過ぎない.もし人間だったら,どんな理由があって伸びをするのか理由付け出来るのだろうか.彼女は疑問に思ったことを口に出す. 「ねえ,私達なんで動くんだろうね」 あまりに抽象的な質問内容に,KOTAは意味が分からないと言いたげに首を傾げる.RINは視線だけこちらに向け,操舵幹を握り締めていた. 「まーたERICAの禅問答が始まった」 RINはこちらには目もくれず茶化す.思考のヒントを得たいERICAは憤慨してみせる. 「ちょっと付き合ってくれたっていいじゃんかさー!気になるんだよー!」 「そんなもん乱数がたまたま弾き出した結果でしょ?それ以上になんか理由いる?」 「むむむ・・・・・・」 RINは仕様書通りの回答を投げて寄越した.つまらない回答だが,ERICAにはそれに反論出来るような理論の綻びはないように思えた.
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